生活音

他人の生活音がすると反射的に気配を消そうとしてしまう。他人が私の存在を悟っているのが気持ち悪いからだ。たとえそれが肉親であってもだめなものはだめだ。一人暮らしのときは尚更だめだった。窓を開ける音、玄関の鍵を開ける音、引き戸を閉める音、話し声、足音、いちいち気になった。

そのうち、私自身が立てる音が周りの部屋の人に不快感を与えて、いわゆる「隣人トラブル」につながるのではないかと不安に思い始めた。若い女の一人暮らし。だいたいどんな人にもナメられる。私の生活音によって、私の知らない間に積もった怒りやイライラが暴力に変わって、私の部屋の玄関を叩いたらどうすればいいのか。そう考えると嫌で嫌で仕方がなくて、やっぱり虎を飼いたくなるのだが無理だし、仕方がないから最小限の生活音で暮らすべく気をつかうようになった。そもそも誰も住んでいないように思わせれば私の部屋には誰も来ないのだし、安全だ。

友人には「神経質すぎない?」と言われた。私もそう思う。でもうるさいよりマシじゃないか?耳に刺さる音っていうのは本当にあるんだぞ。これって『耳と目を閉じ口を噤んで孤独に暮らせ』案件か。孤独に暮らしたい。