いません

炬燵やお布団の中にこっそり入って「いないフリ」をするのがすごく好きだ。子供の頃からずっとそうだった。炬燵の中やお布団の中に全身を隠して、できるだけ平べったくなる。掛け布団が少し波打って、もこもこしているだけのように見せるために、手や頭、足の角度まで全身で工夫する。髪の毛を収納することも忘れない。そして息をひそめる。できるだけ呼吸は静かに控えめに。肺が膨らみすぎないように浅く浅く。

そして、誰に呼ばれても返事をしない。ある程度の擬態が完成したとわかると嬉しい。飽きたら「はい、ここにいました〜」と言いながら芋虫みたいに這い出る。そうやって人を煩わせるのは傍迷惑には違いないが、自分にとっては少しだけ楽しい。果たして布団のフリや炬燵のフリがそんなにうまくいくもんだろうか、と思うけれど、これがまたあまりにもバレないので余計に面白くて、いつの間にかお気に入りの遊びの一つになってしまった。

さすがに大人になってからは見破られることのほうが多いのだが、いまだに炬燵の季節には二、三回やってしまう。体感としては、打率は三割くらい。気づかないフリをしてもらっているだけかもしれない。

ただ単に、暗くて狭くて静かな場所が好きだからこんな子供じみたことを繰り返しているのだが、それ以上に、私がここにいることに誰も気づかない。気づかせないことに成功している。呼ばれても反応しない。反応しないでいられる。そういうことにある種の快感を見出しているのも事実だ。

もちろん炬燵はまだ出していないのだが、今猛烈にお布団の中か炬燵の中に隠れたい。ぺたーっと平べったくなりたい。自室の寝具はベッドで、壁際に置いてあるので、なかなか全身ぺたっとなれない。誰も呼びには来ないが、いないふりをしたい。私はここにいません。