カブトムシ

虫を見ないように頑張ってきたので、aikoの『カブトムシ』が歌えない。少し背の高い〜ぐらいしか歌えない。本当は虫を見ないようにした結果ではないんだろうけど、原因がそれだったとしても全く違和感はない。そういえば最近カブトムシ見てないな。夏も終わってるみたいだし。

 

私は人類の中ではさほど背が高い方ではない。例えば20代の日本人男性の平均身長は171.7cm日本人女性の平均身長は158.3cmと言われているが、私の身長はそれよりも低い*1。だから必然的に、自分より背の高い人と顔を合わせることが多くなってしまうのだが、それに関して小さな悩みを抱えている。

人より背が低いから、人より目線も低い。よって、大抵は相手の鼻の穴が丸見えで、たまに鼻毛が出ていたり鼻くそがついていたりするのを発見してしまう。

個人的にこれはかなりつらい。中学生の時、クラスメイトの脇毛が、半袖のセーラー服の袖口から見えてしまったときくらい居た堪れない。

鼻を見ないようにしても、顔から目を逸らしたまま話し続けるのはあまりにも不自然だから、どうしても一瞬相手の顔を見てしまう。そのときに目に入ってしまう。鼻が目に入ってしまうのだ。

 

「鼻毛が出ていたら/鼻くそが鼻毛に絡まっていたら、教えてあげるか」という大いなる問題も密接に関わってくる、ゆえに、この悩みは更に深刻になっていく。

基本的に、鼻毛については、気心の知れた友人知人が相手なら、私は教える。鼻くそのことは言わない。そういう妙な線引きがある*2

そこに身長の問題も絡む。他人の鼻を見て、そこに異物があった場合、「この鼻毛/鼻くそは、私の背が低いから見えてしまうだけで、ほとんどの人には見えていないのではないか」と一瞬考えてしまうのである。もしそうなら、私ひとりが居た堪れなさを我慢すれば、相手が余計な恥をかかずに済む。

私はどうすべきか。友人知人ならともかく、たまたま近くに座ったから話しただけのような人にそれを伝えるべきなのか。

こんなことを考えていると、学生の頃、遅刻して息を切らしてゼミ室に入ってきた女性の先輩が、薄手のブラウスの下に着けている大胆な色のブラジャーを、かなり大胆に透けさせているのを見て、誰一人その場では指摘しなかった、示し合わせたように全員が「わたしは気づかないふりをします!!!」という無言の主張をして暗黙の合意を形成した、あの時の空気が蘇ってくる。言わないことも優しさなのか。誰ひとり気づかなかったというポーズを作ることが優しさなのか。

……ひとつの優しさの形ではある。私だったら、「もう〜〜誰か言ってよ!でも、気を遣って言わないようにしてくれたのかな。『今まで誰も気づかなかった』っていう可能性を残してくれたんだもんな。みんな優しいな」って思うから。

 

さて、私が他人の鼻の異物問題をこれ以上悩まないためには、究極、私自身がマスクを装着したうえで(自分の鼻に異物があったら見られてしまう)、エベレストに登頂し、下からやってくる登山者を片っ端から射殺して顔を見ないようにがんばるしかないと思う。

……いやだ。むりだ。他人の鼻を見ないために、一生俯いてていいですか? それがダメならせめてカブトムシになりたい。

*1:標準偏差の中にはおさまるので普通っちゃ普通なんだけど

*2:私は鼻炎持ちだから、鼻の分泌物については何も言いたくないのだ。