通院記録 かえるさん

「こんにちは」

「こんにちは。……どうですか」

「ずっとダメです」

「『ダメ』?どう『ダメ』?」

「もう朝起きてダメ、昼食べてダメ、夜もダメ、って感じで、暇さえあれば、ていうかどんな少しの時間でもあればダメで、

〜中略〜

「ムードがよくないんだな」

「ムードですか、はは……」

「そう、ムード」

「ムード」

「『気分』の問題だな」

「気分ですか」

「未来は縮小、過去はダメダメ、現在もダメ、っていうムードになっちゃってるんだな〜」

「はあ」

〜中略〜

「毎日同じことをやってても、いいムードの時は『はあ〜、これが幸せなのかな。毎日同じことやってるけど、平和だなー』って思うんですよ。ムードがダメな時はね、『退屈だ、飽きた、もうダメだ、つらい』って思うもんなんです」

「そうなんですか」

「そう。今の、よくないムードはそのうちちゃんと終わるから」

「終わるんですかね」

「終わる終わる」

「そうですか。でも……終わってもまたそのうち……同じような気持ちになっちゃうんですよ」

「まあまあまあ……そしたらまた、ムードが変わるのを待てばいいから」

「……はは、そうですか」

「そうそう。はい。じゃあ、○○をXXmgにするけどいいですか?」

「いいんじゃないですか」

「次回はいつにしますか」

「えーと……」

〜中略〜

「ま、未来を縮小しないことだな」

「えー……いいです」

「いいの?」

「いらないので」

「そうですか……」

「ありがとうございました」

「はい、お大事に〜」

(了) 

 

病院には薬を貰いに行っている。

 

「そういうものだとは、理屈としては知っています」「知っているからこそ、今、誤魔化されていると感じます」「だからって私の気持ちの全てをそのまま受け入れろとは思いません」「宥めすかして次の通院日まで待つのがあなたの仕事なんだと私は思っています。それは一つの高度な技術だと思っていて、それによって救われる人もたくさんいると思います」「でも私には救いとして機能しません」「また同じことになるって知っているのに。知ってしまえば、どんなに気分やらムードやらが良くても無駄なのに」「私のムード、生まれてからずっとダメなんですけど」「賽の河原と何が違うんですか」

以上はボツ台詞集、又の名を飲み込んだ言葉。言っても意味ないから。宥められて終わるのが目に見えてるから。それでまた絶望ポイントカードが溜まるだけって知ってるから。病院に喧嘩しに行ってるわけじゃないから。

 

ダメになってくると、自分のことも他人のことも全て他人事のように話す癖がある、と気づいた。

 

 

 

近所の田んぼに入って、かえるさんと戯れたい気持ちになった。かえるさんと遊びたいと思った。ただただかえるさんを見て癒されたかった。夏は嫌いだがかえるさんは大好きだ。なぜあんなにかわいいんだろう。

でも、このナリで一人で田んぼ眺めたりしたら、不審者と思われて通報されそうな気がして、やめた。子供や犬の一匹でも連れておけば怪しまれなさそうだが、子供も犬も、一匹も持ってないから、やめた。