死にたみを無理やり百合小説風にシメて萌えるライフハック

 今朝の夢。

 

 外を歩いていたら、6歳くらいの女の子に呼び止められた。

 ちょっとこっち来て、と言うので後をついていくと、ゴミ捨て場に猫がしゃがんでいた。白と茶色のぶち猫だった。目の色は薄い緑で、体はやや大きめ。野良猫のようだった。

 女の子は、私が手に持っているビニール袋を指して、

「この猫、入れて。死んじゃったから」

と告げた。

 私はおそるおそる猫を触った。猫は、しゃがんで目を見開いたまま硬くなっていた。

 ビニール袋に猫を入れることにした。お尻の方から被せるようにして、そっと入れた。ちょうどいいサイズだった。

 袋を結ぶとき、猫と目が合った。その瞬間、ふと「この猫は本当に死んでいるんだろうか」と考えた。ここまで硬くなっているなら生きているとは思えない。でも、もし生きているとしたら、今が引き返す最後のチャンスだ。呼吸はしているか。心臓は動いているか。確認するにはどうすればいいんだ。仮に今だけ息が止まっているとしても、数分後に突然呼吸を始めるかもしれない。心臓だって同じだ。それなら、今この瞬間の私はどうすればいい。

 いろいろ考えて、数秒間フリーズしていた。

 視界の外から、女の子が私を急かす声が聞こえた。私は考えるのをやめて、硬くなった猫の入ったビニール袋の口をぎゅっと締めて、ゴミ捨て場にそっと置いた。

 

 どんなに暗いこと考えたって死ぬことはないってわかっちゃいるけど、どうしても思考が死へ向かおうとするようになってきた。あれもこれも無駄、死ぬのが一番早いみたいな話。

 何が「早い」んだろう。早くする、その目的は何だ? 明確な目的もないのにそんなこと考えることこそが無駄なのでは。……こういった前向きになるための正論(頭の中では、青白く発光する小さな直方体に見える)が重力をもろに食らって、すとん、すとんと落ちて、視界から消える。

 オブラートみたいな薄さでありながら、革みたいな頑丈さを持つ何らかの皮膜が体をさりげなく包んでいる。さりげなさすぎて気づかなかった。腕を見れば腕に皮膜が、目を閉じれば世界中に皮膜がかぶさっている。

 この皮膜は何をするかというと、思考の主導権を握ろうとする。そっと握って、すこしずつ私を死にたくさせる。今までの重くて派手で煙噴いてる装甲車みたいなものとは違って、随分とソフトだけれど、目的は同じだ。ソフトに、でも確実に目的を遂行するこの謎の皮膜はどこからやってきたんだろう。困ったな、なんて思ってみても「まあ何も困らないか」と即座に否定させてしまう。もしかしてけっこう手強い?

 自分で自分のために用意した自分のご機嫌をとるための方策。趣味。そういうものをちりばめてみても、皮膜に覆われて効果が薄くなっている。こんなことしても、なんにもかわらないんだよな、こんなことしても、人生はつづくんだよな、生活は続くし明日は来るし来月も来る、再来月も来るし、誕生日だって、そして来年さえもやってくる。それがあと何十年。続けられる? 続けたい? 本当に?

 やはり本格的に来てしまったようだな、五月。梅雨もそろそろか。なんて言ってごまかしてみても、乗り切れるのか、乗り切ってどうするのか、乗り切れなかったらどうするのか、そのいくつかのシミュレーションの結果に当然のように「死」がいやがった。おいおいお前がいるのかよ、いるならいるってアピールしてくれよ、最近見なかったのに突然出てくるなんて、びっくりするじゃないのよ……。

 

 うう〜んこういうときは……。こういうときは、どうすればいいんだろう。どうすればいいんだろうなあ。人間は本当に嫌だなあ。寝たら解決する? また朝が来るだけなのに、続くだけなのに、寝ても何も解決しないよ。解決するには……まじかー……。うーん。人間やめたいです……。

 

 そう一息にしゃべり終えると彼女は、無邪気を装った顔で力なく笑い、静脈に何かを注射してベッドに倒れこんだ。可愛い顔をだらしなく脱力させ、よだれを垂らして、ときどき空虚に笑う彼女を見ながら、私は砂糖をなめた。

 すでに眠りかけている彼女を起こさないように、そっとベッドに潜って天井をぼんやりと見つめた。ふっと意識が遠のきかけたとき、彼女の声がした。

「あのさ、わたしたち、……このままの姿で、発見されたらいいよねぇ」

 そうだね、と小声で答えて、彼女のよだれをぬぐってやると、彼女はうとうとしながら、その抜群に可愛い顔で満足げに微笑んだ。

「おやすみ」

「うん、おやすみ」

 おやすみ、おやすみ、とっても可愛い顔のあなた。伝えそびれたけど、私も本当に、そう思ってたところだよ。

 

 ……っていう、死にたみを無理やり百合小説風にシメて萌えるライフハックをいま開発したのでシェアしまーーーーーーーーす!!!!!!!!!!!!! 

 なんか死にたみ忘れたわ!! おはよう! おっはよーーー!!!!!!!

 萌えてテンション上がったじゃん! いやもう明日のこととかどうでもいいわ。この百合いいな。自分で書いといて何だけど本当にいいわ。めっちゃいい。最高。

 あっおやすみなさい。