海釣り

 海釣りをしたかったので、今から脳内で行ってきます。

 朝の10時くらいですかね。UVカットのパーカーの下に、テキトーなTシャツ、膝くらいの丈の涼しいキュロットスカートを着て、サンダルを履いています。なんとなく漁港を目指します。

 途中、コンビニでお昼ご飯のおにぎりを二つと、ペットボトルの麦茶を一本、あとは、飴だのガムだのチョコだの、適当な甘いものを買いました。そのあと、釣具屋さんに寄って餌を買います。難しいことがよくわからないので、撒き餌を買ったような気がします。

 なんとなく漁港に着きました。強烈な潮の匂いがします。この匂いだけでおにぎりが二個ぐらい食べられるなあといつも思います(だから今回もおにぎりを二個買ったのです。具は筋子です)。カラッと晴れています。だからといって、ジリジリと照りつけるような日差しでもなく、たまに雲が出たり引っ込んだりしています。日焼け止めを入念に塗ります。

 もろもろの準備をして、麦茶を一口飲んでから、釣りを始めます。最初の30分くらいは、なんとなく落ち着かなくて、あの、船をくくりつけるための、チンアナゴを潰したような形の柱に座ったり、足を掛けてみたり、そこらへんにしゃがんだりします。そうしていろいろな場所に釣り糸を垂らすのですが、そのうち飽きます。

 結局、適当にクーラーボックスを置いて、その上に座ります。今回は小さい針をたくさんつけて、回遊魚を適当に釣ろうという算段です。ただ、別に釣れなくてもよいのです。ぼーっとすることが目的なので、アジだのなんだのがビチビチ釣れても、申し訳ない感じがします。

 そうです、ぼーっとするために私は海に来たのです。周りには誰もいませんから、適当な歌を聞いたり、口ずさんだりしながら海を眺めます。

 海に浮かぶ光の網目、遠くの灯台のまわりに並んで止まっている海鳥、大きな雲、まばらな釣り人、防波堤にぶつかっては砕けていく波、淡々と、しかし勇ましく進んでいくいくつもの漁船を眺めるのです。はあ、と息を吐いたり、おぉーと声を漏らしたりします。思うままに。

 たまに、「海の男」のような雰囲気を醸し出した猫がやってきます。毛はボサボサで、顔や耳に引っかき傷があります。かっこいいね〜と言いながらニコニコして見つめます。猫が寄ってきたら、私もしゃがんで、そっと撫でます。ずっとここにいるの? ここで育ってるの? ご飯ちゃんと食べてる? 私がどんなに尋ねても、海の男のような猫は、ただ鳴くだけです。さっきのコンビニで餌を買ってくればよかったなあ。

 気が向いたら、撒き餌を威勢良く撒いて、結局なんとなく釣れちゃったり、やっぱり釣れなかったり、根がかりしたりを繰り返しながら、時が過ぎていきます。

 あっという間に12時になりました。クーラーボックスの中のおにぎりを取り出して食べます。磯の香りと混じって、なかなかの食べ物になりました。冷たい麦茶で流し込みます。あっという間に食べ終わってしまいましたが、ささやかな充足感があります。

 ここからは、いつ帰ろうかなあと考えながら惰性で釣り糸を垂らします。たまに飽きて、釣竿を置いて、近くをうろうろすると、フナムシがいたので逃げました。なんなんですかあの生き物は。見なかったことにして、でもちょっとまだ怖いので、釣竿をぎゅっと握ります。持ってきた飴を口の中で転がしながら、ふと顔を上げると、ああ、海だ、海だ。海だ海だ海だ、ああ海だなあ。と、ただそればかりを思いました。

 15時くらいになると、完璧に飽きたので、撤収です。あんまりお外にいると紫外線が怖いですし、日光は意外と体力を蝕むものですから。

 バケツの中を泳ぎ回っていた小魚たちを、一気に海に戻します。キャッチアンドリリースですが、この場合、倫理観や道徳のためではなく、単に私が調理したくないからです。

 ああ、ぼーっとできたなあ、これからも、たまにぼーっとしに来よう……。

 

 そんな風に思いながら、帰ってきました。現実に。ここはベッドの上、ずっと夜。以上です。おやすみなさい。


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