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マーモット

雑談だ

知らないお姉さんに声をかけられて、グロスを塗ってもらうことになった。

お姉さんは、めちゃくちゃ可愛くて美人だった。高橋愛にとても似ていた。 お姉さんの顔を見るたび、何度「高橋愛に似てますね」と言いそうになったかわからないけれど、状況に唇の動きを封じられてしまって何も言えなかった。

最初にお姉さんは、3色のグロスを取り出したが、そのうち1色はすぐにどこかへしまった。そして残りの2色のうち、片方の色を驚くべき速さで選んで、これはどうだと私に問うた。私は、今までその色を選んだことがなかったから、一瞬怯んでしまった。しかし、たまにはいいかと思って、軽率にお姉さんが推した色を選んだ。 お姉さんがグロスを筆に取っているのを見ながら、「つい勢いで、滅多に使わないような色のグロスを選んでしまったけど、どんな色になってしまうんだろう。大失敗も止む無し……」などと考えていた。

実際、唇にグロスを乗せてみると、素の唇の色とほとんど変わらない色だった。私に合わせて作ったのかと思うほどだった。お姉さんが手際よく唇を整えてくれた。 色はほとんど同じなのに見覚えのない唇に、私はただただ驚くばかりだった。それにしても、お姉さんの、おそらく経験と学習と天性からくる色選びの勘の良さよ。

今度からこういう色の化粧品も使おうかな、と思うほどには気に入ったのに、どんな色だったかあまり思い出せない。またあのお姉さんのところに行かなきゃいけないのかもしれない。次こそは「お姉さん、高橋愛にめっちゃ似てますね」と言えるだろうか。

テレビで見た、マーモットという動物が非常に可愛かった。 彼らは命がけで縄張り争いをしていた。取っ組み合いの喧嘩だ。 彼らはとても切実なことをしているはずなのに、滑稽で滑稽で笑いが止まらなくなった。マーモットごめん。可愛いんだけど、なんであんなに笑っちゃうんだろう。たぶん私がマーモットじゃないからだ。 突然、人間と人間の取っ組み合いが目の前で行われたら、笑えない。何度か遭遇したことがある。その時はいつも「うわあ治安悪い〜、別の道通らなきゃ」とか思いながら、スマホの電話アプリを立ち上げて110とだけ入力して、いつでも通報できるように握りしめ、めちゃくちゃ早足で逃げた。

いや、人間でなくとも、目の前でマーモットが喧嘩してたら止めちゃうだろう。牙と爪が鋭そうだから私も怪我するだろうけど、そんなことはどうでもいい。マーモットに傷つけあって欲しくない。生態系が崩れようがどうでもいい。マーモットは可愛いから、喧嘩はやめてほしい。

これまで散々言われてきたことだろうけど、レンズと電波と液晶を通すと全部他人事に感じられてしまうのだ。マーモットの喧嘩なんて他人事もいいところなんだけど。 それでも、マーモットごめん。真剣なのに笑ってごめんね。今日も匂いつけと縄張り争い、頑張ってね。寒さと猛禽類に気をつけて。 ああマーモット、いつか生で見たい。マーモット、可愛いマーモット。おやすみなさい。