虚しくなるほどの雪が降っていた。 昼過ぎ、車に乗ると、蚊が一匹いた。ダッシュボードとフロントガラスの間を元気よく飛び回っている。こんな時期に出てくるなんて、何を勘違いしたのか。一体どこに潜んでいたのだろうか。昨夏、車の中に産卵した蚊がいたのだろうか。 蚊は1cmほどの大きさで、見たところ欠損もない。細い脚に黒々とした身体、透明な羽。夏によく網戸に張り付いているような蚊だった。 あちこちにぶつかりながら飛ぶ蚊は、より広い空間を求めているように見えた。 そんなに外に出たいのなら逃がしてあげてもいいけれど、今、私が窓を開けて蚊を逃がせば、蚊はすぐさま死んでしまうだろう。この気候では人間だってきっと死んでしまう。

いや、このまま逃がさずに放っておいても、この蚊はすぐ死ぬ。他の個体と触れ合うこともなく。 蚊の寿命は、どんなに長くても一か月程度のはずだ。今から一か月、この蚊がこのまま車内で生き延びたとしても、まだ三月の初めだ。この辺では三月は冬。 つまり、この蚊は、生殖に及ぶことなく死んでいく。季節外れに生まれるというのはそういうことなのだ。

私は虫が大嫌いで、今すぐに絶滅して欲しいと常々思っている。 だから、今日こうして、目の前に「絶滅分の一」が出現したことに少しだけ安堵した。冬の良いところは虫が出ないところなのだが、こうして必ず生殖せずに死んでいく個体を確認できるところも良い。

ただ、こうして季節外れの蚊みたいに生きて死んでいった人間もいるのだろうと考えると、安堵とは違う感じを覚える。驚いたことに、ほんの少しだけ悲しくて苦しいのだ。 私は人間のことをまだまだ嫌いきれてないし、勝手に他人に感情移入しようとする程度の我の強さがあるのだとわかった。

人間は「生まれる時期を間違えた」とか、よく言っているような気がする。蚊は「生まれる時期を間違えた」と思うのだろうか。思わないだろう。蚊にそんなこと思われちゃ困る。君はこのまま車の中で一人で死ぬんだよ。

今日、気分は普通〜良いくらいだったんだけど、認知資源が枯渇していて完全に電池切れだった。

できるだけ情報量を抑えたかったので、ずっとこれ聞いてた。 [youtube https://www.youtube.com/watch?v=f3L-v-qsvtU?rel=0&w=480&h=360]

脳に悪そうなんだけど、何にも考えずに済むから最高なんだよな。超リピートしたのに、歌が全っ然覚えられなくってびっくり。認知資源が枯渇してる。電池切れてる。 でも、何にも考えなかったおかげでちょっとだけ回復した。これでいいんだろ。