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優しい人

雨宮まみさんが亡くなった。

勝手にファンだった。連載『穴の底でお待ちしています』を初めて読んだ時、こんなにクリアに人の心に寄り添える人がいるんだ、こんなに丁寧で誠実な、優しく身体と心に張りつく文章を書ける人がいるんだ、と、雷に打たれるような衝撃を受けた。それ以来、こっそりファンだった。

9月の終わり、雨宮さんがスニーカーを買いに行く記事を読んだら、私もスニーカーを履いてみようと思えた。恥ずかしながら、この一年くらいずっと「流行ってるからって、私がスニーカーなんて履いてもきっと似合わないだろう。背も低くてヒールがないとバランス悪いし、どうやって合わせたらいいかわからないし、自分のセンスに自信がない。そもそも私に合うスニーカーなんてこの世には無い」と思い込んでいた。でも、雨宮さんの記事を読んだら、きっと私に合うスニーカーもどこかにある、私が探しに行かなきゃいけないんだと気づいた。私の中にあるささやかな勇気と負けん気と愛の場所を指し示して、背中を押してくださった。欲しいものをちゃんと欲しがること、自分だけの美しさを見つけることをいつも教えてくださった。

つい最近、雑誌『SPUR』を買ったら、雨宮さんが出ていた。こんなに美しい人にも「買ったはいいが着られない服」があるのかと驚いた。厳しい風の中を一人でも自由に歩いていくために、自分にぴったり似合う服一枚、布一枚を妥協せずに追い求める。そのために何度もチャレンジしては失敗を積み重ねつつ、一握りの成功もしっかりと手に入れる。そんな姿勢に再び敬服した。

きっと私には想像もできないほど、たくさん傷ついてきた人だったのだろう。雨宮さんの文章は、人がどうしたら傷つくか、あらゆる可能性を熟知している人でないと書けないものだった。どうしたら人は心に怪我をするか、何をされたら傷が痛むのか、すべてわかっているのではないかと何度も何度も思った。あんなに優しい文章の書き手をまだ他に知らない。

私も雨宮さんみたいな40歳になりたい。

できればその先も、雨宮さんを追いかけていたかった。